知識と知恵(大雪山遭難に思う)

北海道・大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で16日、悪天候のため18人が下山できなくなった遭難事故で、道警は17日未明から救助活動を開始した。同日午前11時現在、10人が自力で下山したり、自衛隊などのヘリコプターで救出されたりするなど無事が確認されたが、8人が死亡した。
また、1人で入山していた別の男性登山客が、山頂付近で死亡しているのが見つかった。

このニュースを聞いて、私はまたかと思ったのだが、同じトムラウシで平成14年7月11日愛知県の「ふわく山の会」60代女性4人パーティと、今回と同じ様に旅行社のツアーで福岡県の男女8人パーティ、の二つのグループがやはり低体温症による遭難事故を起こしているのである。
百名山ブームで人気の山だけに、このときも他に相当数の登山者がいたようだが、収容作業を手伝うでもなく、知らん顔をして遺体を見ながら横を通って行ったいくつものパーティがいたという。

そのため当時の北海道新聞には次のような記事が載っていた。
「あの朝登頂したすべての登山者に問いたい。あなたがたは、下半身を寝袋に包み、仰向けに横たわっている女性の脇を通り過ぎたはずだ。声はかけたか。手は合わせたか。その後、極めた頂上での気分はどうだった。せめて後味の悪さぐらいは感じたか」
平成14年7月27日朝刊

今回私は現地にいたわけでもないから軽々にものは言えないが、
何十年も前、今のようにゴアテックスや速乾性の生地など夢の時代の話、冬の穂高であったか、6人パーティが遭難し、リーダーのみが助かったということがあった。

当時朝日新聞の記者であった本多勝一氏はこの件を調査し、リーダーは濡れても低体温症になりにくい純毛の下着を、他のメンバーは濡れると体温が奪われる木綿の下着をつけていたことによる差であると結論づけた。

しかし、と当時の彼は続ける。リーダーはそういった知識を持っていながら、なぜメンバーに純毛の下着を持参するように言わなかったのか
さらに、現場では全員が純毛のセーターを着用していた。ならばそのセーターを一番下に着て、濡れた木綿の下着を上に着るという「知恵」
を働かせていれば、助かったのではないかと。

創作という言葉があるが、知識でつくるのを「作」といい知恵でつくるのを「創」というのだそうだ。

最近の登山者を見ていると知識のみの登山者で知恵のある登山者は少ないと敢えて言わせてもらおう。
火一つおこせない。けが人が出たときにザックやストックを工夫して運ぶ知恵も無い。セルフレスキューなど頭から考えていないようだ。

今回も死者に鞭打つようだが、知恵どころか最低限の知識でさえなかったのではないか。
気温は標高100m上がるごとに0.6℃低くなり、体感温度は風速1mごとに1℃下がるというのは登山者の常識。
16日の旭川の最高気温は19℃で同地の標高100m、トムラウシの標高を2100mとしてその差2000m、つまり旭川より12℃低い7℃、風速は20-25mだったというから体感温度は-13℃から-18℃ということになる。実際は雨も降っていたというから濡れてこれ以下になったのは明らかだ。

防寒防風雨具などの装備はどうだったのだろう。せめてツエルト(ポールなしの簡易テント。たたむとタバコ4箱位の大きさくらいになる)あるいはレスキューシート(数百円で買えるアルミフォイルのようなもの)をポケットに持っていれば少なくとも何人かは助かったのではないか。

今回もTVインタビューで助かったメンバーの一人が、「あの天候で中止にしないのだもの、オレも危なかったけどようやく助かった」と。何を言うか「おれたちは、高い金かけて、飛行機使って、家族に迷惑かけて来てるんだぞ。中止なんかにしてみろ」と有言、無言の圧力があり、ツアーの添乗員はちょっと位の悪天候で中止にしますといえる雰囲気ではないと。
通常の登山パーティのリーダーとメンバーの上下関係はなく、次回以降の参加を期待する企業の添乗員とお客の関係だから不自然さが出る。

家人に言われた
「友達にでさえ煩がられているあなたがガイドなんかやったら一回で首ね」と。
そうさ、オレなら、「雨だ。山は逃げない。今日は中止!」
思う。ツアーガイドは商売に徹しないといけないのだ。

登山中によく見かける多勢ぞろぞろの「金を払って連れて行ってもらう」ツアー登山はいい加減にしたら?
トムラウシに連れて来られた人が「大雪山てどこですか」ときくという。バカが!自分で計画したのならば下調べするはずだから、大雪山という山はないと分かるはずだ。
「トムラウシ」はアイヌ語のトンラウシ「花の多いところ」であって「弔う死」じゃないぞ。

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この記事へのコメント

青木幹晴
2015年09月15日 21:14
私も大学の山岳同好会で、純毛の山シャツを肌に直に着て、純毛のニッカボッカ、純毛のハイソックスと教わりました。今流行の化学繊維の物も試しましたが、寒くてしょうがなかったです。女房や息子さえ私の指示に従ってくれません。また山用品店に行っても純毛の山シャツを売っていません。どこか狂っています。
低山徘徊女
2016年01月05日 15:01
↑自分で縫おうぜw

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